サンティアゴ巡礼とは

サンティアゴ巡礼とは

聖ヤコブ(サンティアゴ)って誰?

 イエスの十二使徒の一人。サンティアゴとは聖ヤコブのスペイン語。(ラテン名Sanctus Iacobus)。紀元44年、時のユダヤ王アグリッパに迫害され斬首されたヤコブ。十二使徒中、最初の殉教者となりました。あの時代、殉教者はすぐに列聖されたため、ヤコブは聖ヤコブとなりました。

 

サンティアゴ巡礼の歴史

さて、ヤコブを斬首したもののキリストの復活を知る王はヤコブの復活を恐れ、その地に遺骸を埋葬することを許しませんでした。聖ヤコブの死を悼んだ弟子のテオドロとアタナシオはその遺骸をこっそり小舟に乗せ風に行く先を任せた所、たどり着いたのはガリシアのパドロンの港、イリア・フラビア。弟子たちはその地に聖ヤコブの遺骸を埋葬しましたが、時の流れの中、いつしか聖ヤコブの亡骸は行方不明になり存在も忘れされたものになってしまいました。

 月日が流れ、813年(814年という説もあり)、星の導きで聖ヤコブの墓が見つけられ、その場所にアルフォンソ2世が教会を建て、カンポ(野原)とステーラ(星)を合わせた意味のコンポステーラという地名が付けられたと言われています(由来にも様々な説があります)。

 

中世・近世の巡礼

 初めてサンティアゴ巡礼をしたのはアルフォンソ2世で、オビエドがその起点であったことから、オビエドからの道はPrimitivo(プリミティボの道)と呼ばれています。特に10世紀後半からエルサレム、ローマなどへの巡礼が困難になり、ヨーロッパの人々はサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼に目を向ける様になりました。

 ヨーロッパ各国とスペインを結ぶ道はローマ帝国時代に築かれていたため、その道に沿う様に巡礼路が整備されていきました。クリュニー会が中心となって巡礼者を助けるための施設や教会を次々と建設したのと、巡礼者の中にも職人が多くいて聖ヤコブに捧げる為に教会や修道院の建設に関わったため、巡礼路の発展は目覚ましいものとなり、12世紀には年間50万人もの巡礼者がサンティアゴの地を訪れたと伝えられています。
 また、9世紀の聖ヤコブの墓の発見は、当時イベリア半島を支配していたイスラム教国へのレコンキスタ(国土回復運動)にも関わってきます。墓の発見はキリスト教軍の士気をあげたと共に、伝説では白馬に乗った聖ヤコブが各地の戦闘の際にキリスト教軍の応援に現れ、イスラム教軍を蹴散らしキリスト教軍を勝利に導きキリスト教を守り続けたと言われています。このことから聖ヤコブはスペインでのキリスト教のシンボルとなり、国の守護聖人と祀られるようになりました。

 しかしそんな最盛期にあった巡礼路も、ペストや戦乱と言った危機がヨーロッパ全体を襲い、巡礼路にも影が差し始めます。と同時期に、巡礼の世俗化、キリスト教内の内部分裂、宗教革命後のプロテスタント諸国での巡礼及び聖人崇拝の禁止、諸聖人から聖母マリアへの信仰心の変化などがあり、サンティアゴ巡礼は次第に下火になっていくことになります。

 16世紀後半にイギリスとの戦いに敗れたスペインでは、イギリス海軍による略奪を恐れた教会が聖ヤコブの遺骸を隠しその場所を失念したことから、巡礼の対象物を失くしてしまったサンティアゴ巡礼に対する人気は凋落してしまいます。

 

近代から現在の巡礼

 行方不明となっていた聖ヤコブの遺骸は19世紀後半、発掘調査でサンティアゴ教会の祭壇下から発見されました。時の法王レオ13世がその遺骸を聖遺物として正式に認めたことで、人々は再び聖ヤコブの墓に参拝できるようになりました。フランコ政権下では、サンティアゴ巡礼はスペインをヨーロッパに向けて開き、ヨーロッパのキリスト教徒をスペインに呼び込む手段として着目されていました。

 1982年のローマ法王はサンティアゴ巡礼をカトリックとして重要なものと指定し、1986年以降はオ・セブレイロの神父エリアス・バリーニャが巡礼者の為に黄色い矢印を道に描き始めた事を発端にし、スペイン各地で友の会が設立されていきました。

 現在、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼者は毎年30万人に上り、ガリシア州政府は観光の目玉としてサンティアゴ巡礼を世界に向けてアピールしています。 

サンティアゴ巡礼とは
ヨーロッパのサンティアゴ巡礼路(出典:Wikipedia)

 

巡礼証明書(コンポステーラ)と巡礼手帳(クレデンシャル)

 巡礼の仕方は人により様々ですが、サンティアゴの大聖堂が巡礼証明書を発行する対象は徒歩、自転車、騎馬、車椅子です。徒歩が一番多く、自転車や少数ながら車いすや中世のように馬やロバを使う人も見られます。

 巡礼証明書がもらえる条件は、サンティアゴまでの最後の道のりを、徒歩/騎馬で100km以上、自転車で200km以上踏破することです。中世のカトリック教会では「コンポステーラ」は贖宥状の一種でありました。また巡礼の動機を宗教かスピリチュアルといった内面的なものを申請する必要があります。

 サンティアゴ巡礼は全ての人に開かれているものですので、宗教は問われません。目的が信仰のためだけでなく、スピリチュアルや自己啓発、観光やスポーツ、単なる目標達成のため巡礼をする人もいて、全ての人が受け入れられています。 

 そして巡礼路を辿って巡礼するのであれば、巡礼者の身分証明となるクレデンシャル(巡礼手帳)を携帯します。アルベルゲ等の宿泊施設に泊まると、巡礼手帳にスタンプが押され、集めたスタンプが巡礼の証明となります。巡礼手帳は宿泊施設や観光案内所、教区教会で入手できます。(日本では日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会が発行しています。)

 なお、巡礼手帳を持っていれば各地の博物館やサンティアゴ・デ・コンポステーラからの帰りの飛行機及び鉄道料金が割引となります。現地で確かめてください。
   

サンティアゴ巡礼とは

スペインの巡礼手帳

サンティアゴ巡礼とは

友の会が発行している巡礼手帳

 

サンティアゴ巡礼とホタテ貝

ホタテ貝は中世からサンティアゴ巡礼のシンボルとなっています。巡礼者はホタテ貝をリュックや首からぶら下げて歩いています。現地で調達できます。
 巡礼路ではホタテ貝が標識として使われていることもあります。巡礼路や州毎に標識がやや異なっていたり、巡礼路添いの民家などに思い思いの手作りの標識が飾られていたりするのを見るのも巡礼中の楽しみです。

サンティアゴ巡礼とは

巡礼のホタテ貝

   

巡礼路について

 巡礼者はさまざまな道をたどりますが人気があるのは「フランス人の道」です。出発地としては、フランス側のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーや、巡礼証明書が発行される条件を満たすサンティアゴから100Km地点のサリアを選ぶ人が多いです。遠くからでは、伝統的なフランスの町(ル・ピュイ、アルル、ヴェズレーなど)から出発する人や、さらに遠くからフランス内の道を目指す人、中世にならって自分の玄関から出発する人もいます。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからすべて歩くと780~900kmの距離で、1日平均20~25km歩くと1か月以上かかります。

 

巡礼宿について

 スペインと南フランスには、巡礼者に一夜の宿を与える宿泊施設(アルベルゲ:Albergueまたはレフーヒオ:Refugio)が点在し、クレデンシャル(巡礼手帳)を持つ人は誰でも泊めてくれます。

 アルベルゲには公営と私営の施設があります。公営のものは教会や各地の村等が経営しており、寄付で賄っているところや5~10ユーロで泊まる事が出来るところなどがあります。これらの施設は原則として予約はできず通常は1泊に限られます。私営のアルベルゲは公営よりも宿泊費がやや高くなっていますが、特色ある施設となっている楽しさもあります。各アルベルゲにはオスピタレロと呼ばれる世話人がいて巡礼者のさまざまな問題や疑問に答えてくれるでしょう。

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着後

 大聖堂では毎日正午に巡礼者のためのミサが開かれ、巡礼者の祖国と出発地が唱えられます。
聖ヤコブの祝日である7月25日やカトリックの祝日などにはボタフメイロ(El Botafumeiro)を見ることが出来るでしょう。(現地の状況を優先してください)

大聖堂へ入って巡礼の無事達成に感謝をささげた後、巡礼事務所へ足を運び、巡礼証明書を貰います。手続きの際には国、出発地、巡礼の方法(徒歩、自転車)、動機を用紙に記載し、最後の100km/200km踏破を証明するためのスタンプが押された巡礼手帳(クレデンシャル)を添えて申し込みます。巡礼証明書の受領は寄付(Donativo)となっております。

「巡礼証明書」はラテン語で記載されていますがご参考に和訳を以下に示します。

 

私たちスペインの保護者であるサンティアゴの墓に誓願を立てるために、世界中から訪れてきた、忠実な巡礼者に対して、使徒サンティアゴの祭壇の印章の保管者であるサンティアゴ大聖堂の大司教は、この文書をもって、この巡礼者 (名前:      )が信仰心をもってこの聖堂を訪れたことを証明する。

証明のあかしとして、この聖堂の印章を押したこの証明書を年  月  日 にサンティアゴ・デ・コンポステーラにて授与した。

 

 巡礼の条件を達成されていない、もしくは動機が「その他(otros)」の場合は「歓迎証」が発行されます。「その他(otors)」の動機としては「スポーツ」,「仕事」なども 含まれます。(編集注、なお2010年から、申請用紙が簡略されて、動機 の欄が「宗教」,「宗教および文化的興味」,「その他」から一つを選択するように変わっています)

2014年から 出発地と歩いた距離を記載した「距離証明書」(Certificado de Distancia)を発行しています。 これも100km以上歩いた場合に発行されます。(この証明書の受領は有料です。2020年6月現在3€)

サンティアゴ巡礼とは

巡礼証明書(La Compostela)

サンティアゴ巡礼とは

距離証明書(Certificado de Distancia)

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